プラネタリウムに行くと、日本ではなかなか見られなくなった美しい星空が、映像ではありますが見ることができます。こういった美しい星空を見ていると、きっと昔の人々にとって星空というものは身近なものだったのだろうなあと思われます。特に砂漠気候の土地では空気が澄んでいるので、星空もきれいに見えます。
さて、プラネタリウムで専門家による解説を聞いていると、星の名前の中にアラビア語起源のものがあることを思い出します。例えば、デネブという星は、アラビア語で尻尾(しっぽ)や尾を意味するザナブ(dhanab, ذَنَب)が元になっています。とはいえ、アラブでは白鳥ではなく雌鶏(めんどり)の尾と見なされるようになったようです。
余談ですが、アラビア語で昴(すばる)をスライヤー(الثريا)と呼びますが、これは中東で広く使われている衛星携帯電話の商標になっています。星空は今でもアラブ圏では身近な存在なのかもしれません。
アラビア語と星の名前については以下の記事が有益な情報を豊富に提供してくれます。
- 財団法人中東協力センター、JCCMEライブラリー
- 上野 悌嗣 アラビア語起源の星の固有名 イスラーム天文学の功績(1)(PDF)
- 上野 悌嗣 アラビア語起源の星の固有名 イスラーム天文学の功績(2)(PDF)
この論文によりますと、ギリシア時代にすでに100あまりの星に名前がつけられていたのですが、それに飽き足らなかったムスリムの天文学者達はアラビア語で星に名前をつけ、その数は300ほどに及ぶそうです。また、イスラーム天文学の基礎がプトレマイオスにある、といった興味深い話がたくさん記されています。
- 科学史の散歩道
- 鈴木孝典 アラビア語起源の星の名前
およそ85の星の名前が出ています。『岩波イスラーム辞典』の「星」の項目がさらに拡張されたものです。このリスト内には逸話などは書かれていないのですが、同辞典には「シリウス」にまつわる逸話なども収録されています。
- 鈴木孝典 アラビア語起源の星の名前
(K.S.)