屠殺

 屠殺は食物規定において重要な意味があります。とりあえず、先ほどのハンバリー派法学派の訳書(177頁)から引用します。

 屠殺節

 バッタと魚と全ての水生動物を除く捕獲されたいかなる動物も屠殺なくしては許されない。

 屠殺には4つの条件がある。

 (第1に)屠殺人の資格であり、ムスリムであれ、啓典の民であれ、物心のついた未成年であれ、女性であれ、割礼前の子供であれ、盲人であれ、正気であることである。(……後略)。

 第2は道具であり、鉄、石、茎など鋭利なものによるものであれば、爪と歯以外は、たとえ強奪品であろうとも許される。

 第3は気管と食道の切断である。(……後略)。

 第4は屠殺時に「アッラーの御名に於いて(ビスミッラー)」と言うことであり、それ以外(の表現)は不可である。もしそれを不注意で怠ったなら、それは許されるが、故意なら許されない*1

 魚は屠殺する必要がありませんので、魚肉が肉類の中では一番簡単です。また、キリスト教徒、ユダヤ教徒などの啓典の民による屠殺も許されています。

 啓典の民による屠殺に際しての諸条件についてなど、屠殺のあり方に関する議論は学者による見解の相違もかなりあります。緩やかにとらえる見解と、厳格に捉える見解の相違が大きいのが現状です。

(K.S.)


*1

منصور بن يونس البهوتي، زاد المستقنع في اختصار المقنع، بيروت، 1994، ص 112-113

لا يباح شيء من الحيوان المقدور عليه بغير ذكاة إلا الجراد و السمك و كل ما لا يعيش إلا في الماء. و يشترط في الذكاة أربعة شروط: أهلية المذكي بأن يكون عاقلا مسلماً أو كتابياً و لو مراهقا أو امرأة أو أقلف أو أعمى، و لا تباح ذكاة سكران و مجنون و وثني و مجوسي و مرتد. الثاني الآلة فتباح الذكاة بكل محدد ولو مغصوباً من حديد و حجر و قصب و غيره، إلا السن و الظفر. و الثالث قطع الحلقوم و المريء. و ذكاة ما عجز عنه من الصيد و النعم المتوحشة و الواقعة في بئر و نحوها بجرحه في أي موضع كان من بدنه إلا أن يكون رأسه في الماء و نحوه فلا يباح. الرابع أن يقول عند الذبح بسم الله لا يجزيه غيرها، فإن تركها سهواً أبيحت لا عمداً، و (يكره) أن يذبح بآلة كالَّة، و أن يحدها و الحيوان يبصره، و أن يوجهه إلى غير القبلة، و أن يكسر عنقه أو يسلخه قبل أن يبرد.