ムサッラーとは

 この言葉はムスリムとの交友関係がある方以外には、あまりなじみのない言葉だと思います。イスラーム法学での定義は以下のとおりです。

 ムサッラー(مُصَلَّى)とは、言語上は受動分子形であり、礼拝あるいは祈願の場を意味する。専門用語としては、空白地や砂漠で、大祭などの際に人々が集まって(礼拝する)場所。マスジドとムサッラーの関係は、ムサッラーはマスジドよりも限定的であるということである*1

 現代では、ムサッラーは事務所の一角などにある小規模な礼拝所を指すこともあります。最初はムサッラーであったものが、年月とともに徐々に人が集まり始めたので、取り壊して新しくマスジド(モスク)に作り替えるといったことも起こります。

 ところで、なぜマスジドとムサッラーの違いといったことがムスリムにとって問題になるのでしょうか。それは、例えばマスジドであれば生理中の女性がそこに留まること等が禁じられますが、ムサッラーであれば問題ない*2というように、イスラーム法の諸規定が存在することがその一つの理由です。

 また、イスラームは学問を重視する教えであり、根拠のない思いつきに何ら意味を与えない結果、言葉の定義などに厳格になっていったという理由もあるでしょう。

 モスク、マスジド、ジャーミウ、ムサッラー、mosque, masjid, jami`, camii, musalla, مسجد، جامع، مصلى のそれぞれでインターネット検索をすると、同じ内容(イスラームの礼拝所)を指しているにもかかわらず、それらの言葉の使われ方の違いが現れます。お試しください。

(K.S.)


*1

الموسوعة الفقهية الكويتية، ج37، ص 194

المُصَلَّى في اللغة بصيغة اسم المفعول: موضع الصلاة أو الدعاء.

و يراد به في الاصطلاح الفضاء و الصحراء، و هو المجتمع فيه للأعياد و نحوها.

و الصلة بين المسجد و المصلى أن المصلى أخص من المسجد.

  なお、この意味でのムサッラーには大別して大祭(イード)の礼拝に使われるものと、葬式(ジャナーザ)の礼拝に使われるものとがありました。

أنظر الموسوعة الكويتية، ج38، ص29-31.

*2 ただし、ハンバリー派では大祭用のムサッラーはマスジドと同様のものと見なし、葬儀用のムサッラーはマスジドとは別のものと見なしたそうです。

الموسوعة الفقهية الكويتية، ج38، ص 31.

اختلف الفقهاء في إجراء أحكام المسجد على المصلى. فقال الحنفية: ليس لمصلى العيد و الجنازة حكم المسجد في منع دخول الحائض، و إن كان لهما حكم المسجد في صحة الاقتداء مع اتصال الصفوف. و قال الشافعية: المصلى المتخذ للعيد و غيره الذي ليس بمسجد لا يحرم المكث فيه على الجنب و الحائض على المذهب، و به قطع جمهور الشافعية، و ذكر الدارمي فيه وجهين. ……. و قال الحنابلة: يحرم على جنب و حائض و نفساء انقطاع ممها اللبث في المسجد ولو مصلى عيد، لأنه مسجد لا مصلى الجنائز فليس مسجداً.