よく使われる表現

 イスラームに関する概説書や入門書などを読まれた方は、そこに六信五行という表現を見られたかもしれません*1。また、今日ではイスラームに改宗する際には、ムスリム諸国の裁判所や日本国内のモスクやイスラーム施設などでの手続きを踏むのが一般的ですが、そのような機関が発行する「改宗証明書」に記載されている基本的な内容は、六信五行です。

 この六信五行には、実は出典があります。預言者ムハンマドの言行録をハディースと呼ぶのですが、そのようなハディースを集めた有名な本がいくつかあります。一番有名なのは、ブハーリーという人が集めたハディース集(預言者の言行録集)であり、二番目に有名なのはムスリムという名前の人が集めたハディース集です。この、ブハーリーという名前の人と、ムスリムという名前の人が集めたハディース集はそれぞれ『サヒーフ・ブハーリー』、『サヒーフ・ムスリム』と呼ばれ、その重要性故に日本語にも訳されています。

 ハディース(ムハンマドの言行録)は聞き語りの形式をとっているので少し馴染みにくいのですが、慣れると臨場感があってなかなか面白い読み物です。また、イスラーム教徒にとってはクルアーン(コーラン)に次ぐ第二の聖典となっています。

(K.S.)


*1 簡潔なイスラームの入門書として、例えば東長 靖 『イスラームのとらえ方』 山川出版社、1996をみても、六信五行という紹介のされ方がされています。