ユダヤ教の聖書(キリスト教から見た旧約聖書)はミクラーやタナハと呼ばれ、3つのセクションに分かれているそうです。トーラー、ネビイーム、ケトビームというのがそれで、トーラーは「律法」「手引き」「教え」というような意味を持ち「モーセ五書」とも呼ばれるそうです*1。
ニコラス・デ・ラーンジュは、
トーラーは、イスラエルの人々の初期の歴史 ―― 歴史のはじまりから、モーセの死まで ―― を語り、また今日に至るまでのユダヤ人の宗教的実践のほとんどがそこから発している、巨大な法体系を含んでいる*2
一九世紀はじめまでのユダヤ人の伝統のほぼ全体が、また今日のすべての伝統主義者と正統派のユダヤ人が、すくなくともトーラー五書の部分は、シナイ山で、神がモーセとイスラエルの民にあたえた直接的啓示だという考えを、多かれ少なかれ共有している*3
としています。
イスラームもトーラー(アラビア語:タウラーالتوراة)がムーサー(モーセ)に下されたのだということを、その教義に含んでいます。
クルアーン(コーラン)の第3章3節は
彼(注:アッラー)はおまえ(注:預言者ムハンマド)の上に真理をもって、それ以前のもの(注:諸啓典)を確証する(ないし裏付ける)ものとして、その啓典(注:クルアーン)を下し給うた。そしてまた、タウラー(トーラー)と福音書を下し給うた*4
として、クルアーンがそれ以前の啓典であるモーセ五書や福音書を確証する(裏付ける)ものであるとしています。
(K.S.)
*1 ↑ ニコラス・デ・ラーンジュ著 柄谷 凛訳 『ユダヤ教入門』岩波書店、2002、69-79頁
手島 勲矢編著 『わかるユダヤ学』 日本実業出版社、2002、42-53頁を参照
*2 ↑ ニコラス・デ・ラーンジュ著 柄谷 凛訳 『ユダヤ教入門』岩波書店、2002、72頁
*3 ↑ ニコラス・デ・ラーンジュ著 柄谷 凛訳 『ユダヤ教入門』岩波書店、2002、76頁
*4 ↑