天使について分かっていることは限られている

 天使は六信五行の2番目にくるのですが、古典的神学書では天使のために独自の章や節を設けられてないこともあります。これは、神学の関心が神の存在やその属性といったことを中心としていることに加え、次のような理由があるのではないかと思います。

 天使がいかなる存在であるのか、理性では理解できません。すると、神から直接下された「神の教え」によって理解するしかない、ということになります。イスラームが認める「神に直結した神の教え」(الشرع)とは、クルアーン(コーラン)とハディース(預言者の言行録)であり、両者とも数は限られています。つまり、天使に関する情報源が限られていることにより、天使に関する記述も限定的とならざるを得ないのではないでしょうか。わからないことについては沈黙する、というのがイスラーム思想のひとつのあり方だと思われます。

 以下では、クルアーン(コーラン)とハディース(預言者の言行録)を主な情報源として、天使について説明してみようと思います*1

(K.S.)


*1

راجع عبد الله بن عبد الرحمن الجبرين، التعليقات الزكية على العقيدة الواسطية، الرياض، 1998، ج 1، ص 70-75