統計に基づいた推計

 日本に何人のムスリム(イスラム教徒)がいるのか、というのは割合に多くの人が関心を持っているようです。特に、報道関係者は様々な情報を裏付けるためにも、出来るだけ正確な数を把握したいと望むようです。

 しかしながら、現在、正確な数字を挙げることは難しい状況にあります。

 まず、日本のムスリム社会に関する一番手頃で纏まった資料は桜井啓子『日本のムスリム社会』だろうと思います。同書は以下のように述べています。

 日本のムスリム人口といった場合、通常はイスラーム圏から来日した外国人ムスリムだけでなく日本人改宗者も含まれているが、やはり中核となるのは前者である。しかしながら入国カードや外国人登録証に宗教に関する記載欄があるわけではないので、実際には、日本に滞在する外国人の何パーセントがムスリムなのか知ることはできない。またイスラームには、信者がモスクやイスラーム団体に所属あるいは登録するといった制度がない(後略)*1

 そこで、桜井啓子は国籍に注目し、『在留外国人統計』を用いることによって概数を算出した上で、同時にこのような算出方法が抱える問題点についても指摘しています。

(K.S.)


*1 桜井 啓子『日本のムスリム社会』ちくま新書、2003年、29-30頁