宗教とお金というと、日本語ではまず「お布施」というのが思い浮かびます。岩波書店 広辞苑 第六版 DVD-ROM版によりますと、
ふせ【布施】 (梵語dānaの訳。檀那は音訳)
①人に物を施しめぐむこと。
②僧に施し与える金銭または品物。「お―を包む」(後略)
とあります。
以下、岩波書店 広辞苑 第六版 DVD-ROM版を「布施」で全文検索した結果のうち、主なものをアイウエオ順に並べてみました。
○おおだんな【大檀那・大旦那】…①布施物を多く喜捨する檀家。寺の檀家の内で有力なもの。
○かぐ【加供】…仏にそなえものをしたり、僧に布施したりして供養を行うこと。
○ごぎょう【五行】…②〔仏〕菩薩(ぼさつ)の修行の5種類。(中略)起信論では布施・持戒・忍辱・精進・止観。
○こんち【金地】…(須達(しゅだつ)長者が黄金を布施して精舎(しょうじゃ)を釈尊に献じた故事による)仏寺の別称。(後略)
○さんせ【三施】…〔仏〕三種の布施。ふつう財施・法施・無畏施をいう。
○ししょうじ【四摂事】…〔仏〕菩薩が衆生(しゅじょう)を引き寄せて救うために行う四つの徳。教えや財物を与える布施摂、優しい言葉を語る愛語摂、身と口と心の三種の行為によって利益を与える利行(りぎょう)摂、救うべき相手の立場に同化して助けの手をさしのべる同事摂をいう。(後略)
○しわすぼうず【師走坊主】…(盂蘭盆とは異なり、歳末には布施もないところから)おちぶれ、やつれている坊主。(後略)
○しんせ【信施】…〔仏〕信者が三宝(仏・法・僧)に捧げる布施。(後略)
○ずだぶくろ【頭陀袋】…①頭陀の僧が経巻・僧具・布施物などを入れて首にかける袋。
○せったい【接待・摂待】…②仏家の布施の一種。路上に湯茶を用意し、往来の人にふるまうこと。(後略)
○たくはつ【托鉢】…〔仏〕①修行僧が、各戸で布施する米銭を鉄鉢で受けてまわること。乞食(こつじき)。(後略)
○だんか【檀家】…一定の寺院に属し、これに布施をする俗家。(後略)
○だんはらみつ【檀波羅蜜】…〔仏〕(中略)布施波羅蜜。他人に財宝・善法などを施す修行。(後略)
○つけぶせ【付け布施】…本家や親方の家の葬儀などの時、親類や子方の者が僧に贈る金銭。
○のぶせ【野布施】…葬場で参会者に分け与える施物。
○はちや【鉢屋】…近世、鉢または瓢(ひさご)をたたき歩いて布施をうけた者。(後略)
○ひゃくだんな【百檀那・百旦那】…盆・暮などの布施に百文位しか出さない、けちな檀那。
○ひゃくはたご【百旅籠】…布施を出した者が寺の斎ときにつくことを戯れていう語。
○ふせないきょう【布施無経・無布施経】…狂言。住職が檀家へ経を読みに行くと、主人が布施を忘れるので、説教などで思い出させようとして苦心する。
○ふせや【布施屋】…奈良・平安時代、調・庸の運搬者や旅行者のために駅路に設けた宿泊所。多くは僧侶による慈善事業だが、国家が保護を加えたものもある。行基や最澄の設けたものが有名。
○ほうしゃ【報謝】…②仏事を修した僧や巡礼に布施物をおくること。また、神仏への報恩のため、慈善をなし、金品を施すこと。
○坊主丸儲け…坊主は経を読むだけで布施がもらえ、元手いらずで儲けることができる。
以上を見ますと、布施という言葉は菩薩の衆生に対する徳として行われるという意味や、必要としている人に飲食物やお金を振る舞うという意味や、僧侶による慈善事業という意味もあるものの、お寺やお坊さんに対して捧げるもののことを主に指しているようです。
特に民衆の実感に即した言葉を見てゆくと、やはり寺院・僧侶に対して贈るもののことを布施と呼ぶ用例が圧倒的に多いように思われます。
なお、岩波書店 広辞苑 第六版 DVD-ROM版は株式会社電子辞典から発売されているものを用いました。