先ほどのハンバリー派法学書『イスラーム私法・公法概説 公法編』の170-71頁は次のように続けます。
「合法の食物」項
それ以外の馬や家畜、鶏、野生ロバや牛、カモシカ、ダチョウ、兎やその他の野生動物は許されている。
蛙、ワニ、蛇以外の水生動物は全て許されている。
毒物以外の禁じられたものを(食べることが)不可欠な者には、その中から、彼の生命(維持の必要)を満たす(だけの)ものは合法となる。(……後略)*1。
イスラームの食物規定の原則は、禁じられていないものは何でも食べて良いということです。陸棲動物については禁じられるものがいろいろと挙げられていましたが、水棲動物についてはその殆どが食べられるものです。
また、生命の維持に必要であるなど、どうしても禁じられたものを食べざるを得ない場合には食べて良いというのは、原則的にイスラームが生命の維持などを食物規定そのものよりも重要視していることに由来しています。ある規定が存在する場合、それが単純に絶対視されるのではなく、様々な条件等を考慮に入れた上で運用されます。
(K.S.)
*1 ↑
فصل: و ما عدا ذلك فحلال، كالخيل و بهيمة الأنعام والدجاج و الوحشي من الحمر و البقر و الظباء و النعامة و الأرنب و سائر الوحش. و يباح حيوان البحر كله، إلا الضفدع و التمساح و الحية. و من اضطر إلى محرم غير السم حل له منه ما يسد رمقه و من اضطر إلى نفع مال الغير مع بقاء عينه لدفع برد أو استسقاء ماء و نحوه وجب بذله له مجاناً، و من مر بثمر بستان في شجرة أو متساقط عنه و لا حائط عليه و لا ناظر فله الأكل منه مجاناً من غير حمل. و (تجب) ضيافة المسلم المجتاز به في القرى يوماً و ليلة.