ハディース学

 この、伝承経路の真偽等を事細かく追求した学問が、ハディース学です。ですから、ハディース学の立場から見たハディースとは、常に「伝承経路+本文」となるわけです。なぜ、このような細かい作業が必要になるかと言えば、預言者のハディースが偽作されたという歴史的事実があったからです。

 ハディース学者(預言者の言行録の専門家)は伝承者の誠実性、記憶力、生没年等を事細かくかき集め、気の遠くなるような作業に没頭しました。また、本文の検討も行われ、例えが預言者ムハンマドに遡るとは考えられないようなものも、偽作として排除されました。

 ハディースを集めたものをハディース集と言いますが、もっとも権威の高いものがサヒーフ・ブハーリーとよばれる書で、次点がサヒーフ・ムスリムと呼ばれる書です。この二冊は、本文(マトン)の部分が日本語に全訳されており、一般に入手可能です。

 サヒーフ・ブハーリーは 牧野信也訳『ハディース イスラーム伝承集成』全6巻、中公文庫、2001年 で書店で注文できます。

 サヒーフ・ムスリムは 磯崎定基、飯森嘉助、小笠原良治訳『日訳 サヒーフ ムスリム』宗教法人日本ムスリム協会、2001年 で宗教法人日本ムスリム協会のホームページに注文方法が記載されています。なお、同書は1987年に日本サウディアラビア協会から発行された同名の書物の再版です。

(K.S.)