2.イスラームの事情

 『宗教年鑑』では神道系・仏教系・キリスト教系・諸教別に宗教団体を分類しており、イスラーム系の宗教団体は「諸教」に相当します。

 イスラーム系の宗教団体としては、(1)ダル・ウッサラーム、(2)名古屋モスク、(3)日本イスラーム文化センターが記載されています(平成23年版、何れも文部科学大臣所轄単位宗教法人として)。しかしながら、上記の何れも包括宗教団体ではないため、同書第2部の「宗教統計」には現れませんし、そもそもこれらの団体が日本のムスリム人口を把握しているわけでもありません。

 仏教には本山末寺制度や檀家制度、キリスト教には教会制度があり高度に組織化されていますが、イスラームにはそのような制度が存在しないため、信徒数も把握されないという特徴があります。これは信徒数の多寡によるものではなく、例えばキリスト教系の信者数は日本の総信者数の1.4%1ですが、同書第2部第6表「包括宗教団体別被包括宗教団体・教師・信者数」の(1)文部科学大臣所轄宗教法人では神道系に12頁(約33%)、仏教系に14頁(約39%)、キリスト教系に6頁(約17%)、諸教に4頁(約11%)が割かれていることからも、組織化に大きな努力を払っていることが分かります。

 日本には各宗教の信者数を把握する制度が無い上に、イスラームにはイスラーム教徒(ムスリム)を組織化する制度もないため、日本にいるイスラーム教徒の数は推計によって算出されるしかないのが現状です。


*1『宗教年鑑 平成23年版』35頁。