3.推計方法

 日本のムスリム人口については推計方法の相違によって、幾つか異なった推定値があります。代表的なものとその概要を以下に述べます。

(1)店田方式

 店田廣文「世界と日本のムスリム人口 2011年」『人間科学研究』第26巻第1号、2013所載の推計方法です。

 ■計算の仕方(2010年の統計値による)

 ①正規在留の外国人ムスリム数

 『在留外国人統計』記載の国籍別登録者数

   × 各国別のムスリム比率の推計値(Encyclopedia Britannicaによる)

  91,744人。

 ②正規在留の外国人ムスリムのうち日本人配偶者を有する数(=日本人配偶者数)

 『在留外国人統計』記載の「日本人の配偶者等」在留資格登録数

   × 88.9%(成人率:アジア地域出身の登録外国人人口より算出)

  8,939人。

 ③不法残留者数

 「本邦における不法残留者数について」(法務省)記載の上位10カ国の外国人数

   × 各国別のムスリム比率の推計値

  2,362人。

 ④日本人ムスリムのうち外国人の配偶者でない人数

 正規在留の外国人ムスリム数(①)

   × 約5%(外国人ムスリムに対する日本人ムスリムの見込み比率)

   ÷ 2(日本人配偶者分を控除)

  2250人。

 以上、①~④を合計すると105,565人。

(2)桜井方式

 桜井啓子『日本のムスリム社会』筑摩書房、2003年所載の推計方法です。

 ■計算の仕方(2000年の統計値による)

 ①正規在留の外国人ムスリム数

  『在留外国人統計』からイスラーム諸国会議機構(OIC)加盟国出身者を抜き出す。

  56,322人

 ②正規在留の外国人ムスリム数より短期滞在者を除算。

  上記のうち、「短期滞在」資格入国者を抜き出し(14,218人)、①より除算する。

  42,104人(=③)

 ④入管協会公表の不法残留者数報告よりOIC加盟国の不法残留者数を抜き出す*2

  21,448人

 ⑤日本人配偶者数(=正規在留の外国人ムスリムのうち日本人配偶者を有する数)

  『在留外国人統計』記載の「日本人の配偶者等」在留資格登録数

   × 80%(日本人の配偶者を持つ成人の推定割合)

  6,835人

 ⑥日本人改宗者数

  日本人改宗者が比較的多く加入していると見られる日本ムスリム協会の会員数

  約800人

 以上、③~⑥を合計すると71,187人


*2 イラン、パキスタン、バングラデシュ、インドネシアについてはその全数を、マレーシアについては三分の一弱を合計する。