02 子供を愛する

ブハーリーのハディースより(صحيح البخاري، كتاب الأدب)

 アブー・フライラの伝えるところによると、神の使徒はアル=ハサン・ブン・アリーにキスをした。彼の御許にはアル=アクラア・ブン・ハービス・アッ=タミーミーが座っていたが、「本当に、私には10人の子供がおりますが、その内の一人ともキスをしたことはありません」と言った。すると、神の使徒は彼を見つめ、それから

(他人を)愛さないものは、(他人から)愛されない(マン・ラー・ヤルハム・ラー・ユルハム)。

と語った。*1

 現代のムスリムの多くは子煩悩ですが、イスラーム以前のアラブは子供に愛情を注ぐことを必ずしも重視しなかったようです。子供を大切にすると言うことが規範となったのは、イスラームの登場以降です。

 ムハンマドがムスリムから今でも敬愛されている理由の一つは、彼が知勇に於いて傑出した人物であったと同時に、愛情細やかな人間として、愛情のあるべき姿についても示したからであろうと思われます。

 なお、イスラーム学というのは実に用意周到で、このハディースの注釈書には次のような一文があります。

 預言者のアル=アクラアへの返事の中には、婚姻が許されない(注:近親者等)ものと結婚が可能なもののうちの子供やそれ以外へのキスが、慈愛や愛着のためのものであり、情欲や肉欲のためのためのものではないことの兆候がある。(子供などを)抱きしめること、臭いをかぐこと、抱擁することも同様である。*2

 ハディース(預言者の言行録)は、イスラームの聖典であり権威です。従って、恣意的な解釈によって悪用されると大変なことになるため、各種の予防線が張られています。そのために、イスラームの学者たちも用意周到な書き方をせざるを得なくなるため、彼らの著作が難解になったり煩雑になったりするのは避けがたい一面もあります。

 ただ、その目的は預言者ムハンマドによって行われた正しい教えを正確に伝えようとすることにあるわけです。

(K.S.)


*1

فتح الباري، شرح صحيح البخاري،

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كِتَاب الْأَدَبِ >> باب رَحْمَةِ الْوَلَدِ وَتَقْبِيلِهِ وَمُعَانَقَتِهِ

الحديث: حَدَّثَنَا أَبُو الْيَمَانِ أَخْبَرَنَا شُعَيْبٌ عَنْ الزُّهْرِيِّ حَدَّثَنَا أَبُو سَلَمَةَ بْنُ عَبْدِ الرَّحْمَنِ أَنَّ أَبَا هُرَيْرَةَ رَضِيَ اللَّهُ عَنْهُ قَالَ قَبَّلَ رَسُولُ اللَّهِ صَلَّى اللَّهُ عَلَيْهِ وَسَلَّمَ الْحَسَنَ بْنَ عَلِيٍّ وَعِنْدَهُ الْأَقْرَعُ بْنُ حَابِسٍ التَّمِيمِيُّ جَالِساً فَقَالَ الْأَقْرَعُ إِنَّ لِي عَشَرَةً مِنْ الْوَلَدِ مَا قَبَّلْتُ مِنْهُمْ أَحَداً فَنَظَرَ إِلَيْهِ رَسُولُ اللَّهِ صَلَّى اللَّهُ عَلَيْهِ وَسَلَّمَ ثُمَّ قَالَ مَنْ لَا يَرْحَمُ لَا يُرْحَمُ.

*2

فتح الباري: وفي جواب النبي صلى الله عليه وسلم للأقرع إشارة إلى أن تقبيل الولد وغيره من الأهل المحارم وغيرهم من الأجانب إنما يكون للشفقة والرحمة لا للذة والشهوة، وكذا الضم والشم والمعانقة.