アッラー(アッラーフ)の名前の由来には大まかに分けて4つの説が存在します。
1.固有名詞説
2.アラビア語の単語を起源とする派生名詞説(以下、派生名詞説と略記)
3.派生名詞起源・固有名詞転化説
4.他言語起源説
さらに、派生名詞説は、
(1)アラビア語で神を意味するイラーフからの派生説
(2)それ以外の単語からの派生説
に分かれます。
クルアーン解釈書の中ではアッラーの名前は、第1章第1節、すなわち「慈悲あまねく慈悲深きアッラーフの御名において」(通称バスマラ)の釈義において論述されるのが通例です。以下では、ヨルダンの王立アール・アル=バイト・イスラーム思想研究所の運営するaltafsir.comが最重要古典クルアーン解釈書としている、1.アッ=タバリー、2.アッ=ザマフシャリー、3.アッ=ラーズィー、4.アル=クルトゥビー、5.アル=バイダーウィー、6.イブン・カスィール、7.アッ=シャウカーニーの各々の注釈書の該当箇所を見てゆきたいと思います。なお、同サイトの最重要古典クルアーン解釈書として選ばれているジャラーライン(アル=マハッリーとアッ=スユーティー)の注釈書は、1章2節の釈義として、「アッラーフとは、正当な【崇拝される者】の固有名詞である」*1とのみ簡単に記しています。
なお、本記事の翻訳文の凡例は下表のとおりです。
凡例 |
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日本語表記 |
アラビア文字 |
ラテン文字 |
説明 |
イラーフ |
إله |
'ilāh |
定冠詞が付けられず限定されない神。おおよそ、「god」に相当。不定形名詞(非限定名詞)としての神。 |
アル=イラーフ |
الإله |
al-'ilāh |
定冠詞が付けられて限定された神。おおよそ、「the god」に相当。定形名詞(限定名詞)としての神。 |
【彼】 |
هو |
huwa |
「彼」は三人称・男性・単数を示す人称代名詞だが、 |
*1 ↑