第3の課題。この(アッラーフという)語の言語別の派生方法について。
彼らの一部は、この(アッラーフという)言葉がアラビア語ではなく、ヘブライ語ないし古代シリア語であり、彼ら(これら言語の話者達)は「’Ilāhan Raḥmānā wa Marḥiyānā|*1إلهاً رحمانا ومرحيانا」と言うが、これがアラビア語化されて「Allah al-Raḥman al-Raḥim|الله الرحمن الرحيم」となったとると主張する*2。
とはいえ、これはありそうではない。また、2言語間に生じた相似性によってこの(アッラーフという)言葉がアラビア語起源であることが毀損される必然性もない。
その(アッラーフがアラビア語起源であるとの)根拠は、クルアーンの章句「またもしおまえが彼らに誰が諸天と地を創造したのかと問えば、必ずや彼らは、『アッラーフである』と言うであろう。」(31章25節)や「おまえは【彼】の同名者を知っているか。」(19章65節)であり、後者の【彼】が意味するところはアッラーフという言葉を指すことで(学者達は)合意している*3。
多数派はこの(アッラーフという)言葉がアラビア語であると認めている。この語が、至高なるアッラーフの固有名詞だと考えるものは、こういった考究から免れている。
他方、それ(アッラーが固有名詞であるということ)を否定する者の説は2つある*4。
クーファ学派は、この語の起源がイラーフ(’ilāh|إله)であり、そこに強意のために定冠詞(al|ال)が付け加わり、アル=イラーフ(الإلاه|al-‘ilāh)となり、さらにこの語が人々の口の端に上ることが多く 「イ」の音(’|ء)が煩雑であるために取り除かれ、その結果2つの l|ل が隣接(al-lāh|اللاه)したために最初の l|ل が同化し(促音となり)、アッラーフ(Allāh|الله)となったとする*5。
他方、バスラ学派は起源を lāha|لاه であるとし、これに定冠詞(al|ال)を付け加え、アッラーフ(Allāh|الله)となったとする*6。
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刊本によっては、「الها رحمانا ومرحيانا」としているものもあり、これに従うと、Alāhā Raḥmānā wa Marḥiyanā と読むことも可能である。
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*4 ↑
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*6 ↑