3.アッ=ラーズィーの注釈書(8)

ここまでのラーズィーの議論を纏めたのが以下の諸表です。

アッラーフという名前の起源・諸説分類(ラーズィー)
学説
アラビア語表記
根拠や意味
固有名詞説
اسم علم
①派生語は集合名詞としての性質を持つ故。

②アッラーフという語の後に諸属性が来る。

③クルアーン1965節の記述。

派生名詞説 イラーフ
إله
①【崇拝される者】の意。

②崇拝されるに相応しい者の意。

‘aliha ilā
أله إلى
安らぎを得るの意。
al-walaha
الوله
理性の消失の意。
lāha
لاه
高遠にあるの意。
‘aliha fī
أله في
思い惑うの意。
lāha
لاه
隠れるの意。
‘aliha
أله
熱望するの意。
‘aliha
أله
恐れる(自動詞)保護を与える(他動詞)の意。
他言語起源説 قال بعضهم هذه اللفظة ليست عربية بل عبرانية أو سريانية ヘブライ語ないし古代シリア語の ‘Ilāhan Raḥmānā wa Marḥiyānā もしくはAlāhā Raḥmānā wa MarḥiyanāAllah al-Raḥman al-Raḥimに転化した。
[出典]ラーズィーの注釈書をもとに筆者作成

アッラーフという名前の派生法・文法学派別(ラーズィー)
クーファ学派
إله

定冠詞を付ける
الإلاه

ハムザを外す
اللاه

最初のlل の同化
الله
‘ilāh
al-‘ilāh
al-lāh
Allāh
 
バスラ学派
لاه

定冠詞を付ける
الله
lāha
Allāh
[出典]ラーズィーの注釈書をもとに筆者作成

アッラーフという名前の使用法(ラーズィー)
 
ラーズィーの立場
それ以外の立場
アッラーフ 至高なるアッラーフのみを指す
アル=イラーフ 至高なるアッラーフのみを指す 『これこれの神』という様に属格構造によってアッラーフ以外の神を指す
イラーフ 至高なるアッラーフを指さない
[出典]ラーズィーの注釈書をもとに筆者作成

アッラーフという言葉の特異性(ラーズィー)
1.アッラーフと言う言葉の頭から一文字ずつ削除する場合の変化
الله
لله
له
ه
Allāh
li-llāhi
lahu
hu
アッラーフ
アッラーフに
【彼】に
【彼】
2.アッラーフと言う言葉でなければ、信仰告白は有効ではない。
[出典]ラーズィーの注釈書をもとに筆者作成