4.アル=クルトゥビーの注釈書(2)

 第2の見解(アッラーフという言葉が固有名詞であるとの見解)。アッ=シャーフィイーやアブー・アル=マアーリー(アル=ジュワイニー)*1、アル=ハッタービー*2、アル=ガザーリー、アル=ムファッダル*3等学者達の一団は、この見解に至っている*4
 アル=ハリールとシーバワイヒから伝えられるところでは、al-|ال، الألف واللام はそれ(Allāhという名前)にとって不可欠であり、取り除くことは出来ない*5
 アル=ハッタービーは次のように言う。「alはこの名前(Allāh)にとって骨組みの一部であり、定形名詞化するために付け加えられたのではないとの根拠は、呼びかけの不変化詞(間投詞)がその前に置かれることである。例えば、(アラビア語話者である)あなたがヤー・アッラーフ(yā allāhu|يا الله)と言うように。
 そして、呼びかけの不変化詞(間投詞)は定冠詞のalと隣接することはできない。あなたも、「ヤー・アッラーフ」と言うのに対し、「ヤー・アッ=ラフマーン」や「ヤー・アッ=ラヒーム」とは言わないように。これにより(aとlの)両者がこの名前(Allāh)の骨組みの一部であることが例証された」。アッラーフこそ最もよくご存じである*6

 以上のクルトゥビーの議論は、以下の表のとおり纏められます。

アッラーフという名前の起源・諸説分類(クルトゥビー)

アラビア語表記

根拠や意味

派生名詞説

イラーフ

إلاه

シーバワイヒの見解

lāha

لاه

シーバワイヒの伝える異説

waliha

وَلِهَ

思い惑う

yata’allafu ‘ilā

يتألَّف إلى

熱望する

lāha

لاه

高遠

‘alahata’allaha

أَلَهَ/تَأَلَّهَ

崇拝/敬神

hu

ه، الهاء

【彼】

固有名詞説

موضوع للذات علم

(1)シャーフィイー、ジュワイニー、ハッタービー、ガザーリー、ムファッダル等の見解。

(2)Allāhから定冠詞のalを取り除くことは出来ない(シーバワイヒ等からの伝承)。

(3)alAllāhという単語の骨組みの一部(ハッタービーの見解)

[出典]クルトゥビーの注釈書をもとに筆者作成


*1 アブド・アル=マリク・アル=ジュワイニー、通称イマーム・アル=ハラマイン。生年:419(1028)、没年:478(1085)。ガザーリーは彼の弟子に当たる。

*2 ハムドゥ・ブン・ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アル=ハッタービー。生年:319(931)、没年:388(998)。

*3 ムファッダル・ブン・サルマ・ブン・アースィム・アッ=ダビー・アル=クーフィー。没年:不詳、290(903)年時点では生存。

*4

القول الثاني: ذهب إليه جماعة من العلماء أيضاً، منهم الشافعي وأبو المعالي والخطّابي والغزالي والمفضَّل وغيرهم.

*5

ورُوي عن الخليل وسيبويه: أن الألف واللام لازمة له، لا يجوز حذفهما منه.

*6

قال الخطابي: والدليل على أن الألف واللام من بنية هذا الاسم، ولم يدخلا للتعريف: دخول حرف النداء عليه؛ كقولك: يا الله، وحروف النداء لا تجتمع مع الألف واللام للتعريف؛ ألا ترى أنك لا تقول: يا الرحمن ولا يا الرحيم، كما تقول: يا الله، فدل على أنهما من بنية الاسم. والله أعلم.