また、【彼】の本質に対する固有名詞であるとも言われる。というのも、【彼】は形容されることはあっても、形容することはないからである*1。また、【彼】には【彼】の諸属性の礎となる名前が不可欠であるからである。
そして、それ(固有名詞としてのアッラーフ)以外の呼称は【彼】に適切ではない。というのも、もしそれ(アッラーフという言葉)が形容詞(普通名詞)であったら、「慈悲深い御方以外に神はない」というのが同位者を妨げないのと同様に、「アッラーフ以外に神はない」との言葉が「神の唯一性」(の表現)とはならないからである*2。
そして、最も有力な説は、それ(アッラーフという言葉)は起源においては形容詞(普通名詞)であったが*3、【彼】以外(を指すこと)には用いられない程に、それ(アッラーフと言う名前)が【彼】を指すことが一般的になった際に、それ(アッラーフという名前)は【彼】にとっての固有名詞のようになったのである。「昴」や「雷」*4と同様に。(従って固有名詞としての性質を獲得し)形容詞により修飾されるのに対し、形容詞的修飾語とはならず、指示対象における同位者を有する可能性もないのである*5。
なお、その(アッラーフの)起源は古代シリア語のlāhā|لاها であり、その一番最後のā|ا が除去され、そこにl|ل が挿入されたとも言われる*6。
以上のバイダーウィーの議論は以下のとおり纏められます。
アッラーフという名前の起源・諸説分類(バイダーウィー) |
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学説 |
アラビア語表記 |
根拠や意味 |
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派生名詞説 |
イラーフ |
إله |
元来、アル=イラーフはあらゆる【崇拝される者】 |
‘aliha |
أله |
思い惑うの意。 |
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‘aliha |
أله إلى |
安らぎを得たの意。 |
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‘aliha ‘ālaha |
أله آله |
出来した事態から恐れるの意。 保護を与えるの意。 |
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‘aliha |
أله |
熱望するの意。 |
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waliha |
وله |
思い惑い、理性が消失するの意。 |
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lāha |
لاه |
隠れる、高遠にあるの意 |
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固有名詞説 |
اسم علم |
①【彼】の本質に対する固有名詞。 ②【彼】は形容されることはあっても、形容することはない故。 ③【彼】には【彼】の諸属性の礎となる名前が不可欠である故。 |
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派生名詞起源 固有名詞転化説 |
أنه وصف في أصله لكنه لما غلب عليه وصار له كالعلم |
アッラーフという言葉の起源は形容詞(普通名詞)であったが、【 |
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他言語起源説 |
وقيل أصله لاها بالسريانية |
古代シリア語の lāhā がAllah に |
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[出典]バイダーウィーの注釈書をもとに筆者作成 |