アッラーフは至高なる主の固有名詞であり、それは最も偉大な名前であるとも言われる。というのも、それは全ての属性によって形容されるからである。クルアーンに「【彼】はアッラーフ、【彼】のほかに神はいない御方。隠されたものも顕れたものも知り給う御方。【彼】は慈悲あまねき、慈悲深い御方。【彼】はアッラーフ、【彼】のほかに神はいない御方。王なる御方、聖なる御方、平安なる御方、安全保障者、統制者、威力比類なき御方、強制者、尊大なる御方。アッラーに称えあれ、彼らが共同者として配するものを超越し給う御方。【彼】はアッラーフ、創造者、造物者、整形者。【彼】にこそ最良の諸々の名は属す。諸天と地のものは【彼】を賛美する。【彼】こそは威力並びなく英明なる御方」(59章22-24節)と言われているように*1。
従って、残りの神名は全てそれ(アッラーフという名前)の形容詞とされる。クルアーンに「そしてアッラーフに最良の諸名は属す。それゆえ、それによって【彼】を呼べ」(7章180節)や、「言え、『アッラーフに祈れ、あるいは慈悲あまねき御方に祈れ。どちらでおまえたちが祈ろうとも、最良の諸名はすべて【彼】に属す』」(17章110節)と言われているとおりである*2。
また、両正伝集*3にはアブー・フライラからの伝承として、預言者ムハンマドが「アッラーフには99の、つまり100から1を除いた神名が属し、それを数えた者は楽園に入る」*4と言われた、とある*5。
またそれは、至高なる【彼】以外に対しては用いられない名前であり、それ故、アラブの言葉においては「fa`ala/yaf`aluの活用規則」型の派生語(普通名詞)がそれ(アッラーフという言葉)にあるとは知られていないのである。そして、文法学者達の一派はそれが「硬直した名詞」*6であり、派生語(普通名詞)を有さないとしている*7。
*1 ↑
*2 ↑
*3 ↑ ブハーリーのハディース集とムスリムのハディース集。
*4 ↑ 牧野訳『ハディース』では3巻74頁、6巻281頁、『日訳 サヒーフ・ムスリム』では3巻596頁に収録。
*5 ↑
*6 ここでは、派生名詞との対比で使われている。