これに対し、それ(アッラーフという名前)は派生名詞であるとも言われる。(中略)(古詩の中で)詩人がこの語の動名詞形で言及している。すなわち’alaha|أله、ya’lahu|يأله、’ilāhatan|إلاهة、ta’alluhan|تألهاًの動名詞であるal-ta’allahu|التألهである*1。
また、彼らの一部は、それが派生語(普通名詞)であることの根拠をクルアーンの章句「また|【彼】は|アッラーフである|諸天においても|地においても」(6章3節)に求めている。これは、つまり「【彼】は【崇拝される者】である」(との解釈であり)、同様に「また|彼は|~な御方(関係代名詞)|天において|神であり、また|地において神である」(43章84節)とも言われている。シーバワイヒはアル=ハリールからその(アッラーフの)起源がイラーフであると伝えている*2。
また、その言葉(アッラーフ)の起源はlāha|لاهであるとも言われる(としており)、(中略)これがシーバワイヒの見解である*3。
アル=キサーイー*4とアル=ファッラー*5は、その起源はイラーフであるとする*6。
アル=クルトゥビーは次のように言う。「さらに、それは思い惑うことを意味する waliha|وَلِهَ から派生したとも言われる」*7。
アッ=ラーズィーは次のように言う。「それは、’aliha ilā|أله إلى 、つまり安らぎを得た、からの派生語(普通名詞)であるとも言われる」*8。
また彼は次のように言う。「それは、隠れるの意味のlāha|لاه から派生したとも言われる」*9。
「(親から)離れた子供が母親を熱望するという意味の’aliha |أله から派生したとも言われる」*10。
また彼は次のように言う。「’aliha|أله 、つまり(自動詞の場合は)出来した事態から恐れる、(他動詞の場合は)保護を与えるという言葉から派生したとも言われる」*11。
そして、ラーズィーはそれ(アッラーフという言葉)が決して派生語(普通名詞)ではないとの見解を選んでいる*12。
以上のイブン・カスィールの議論は以下のとおり纏められます。
アッラーフという名前の起源・諸説分類(イブン・カスィール) |
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学説 |
アラビア語表記 |
根拠や意味 |
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固有名詞説 |
اسم |
①それは全ての属性によって形容される故。 ②59章22-24節、7章180節、17章110節。 ③文法学者達の一派は「硬直した名詞」であり、派生語を有さないとする。 |
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派生名詞説 |
al-ta’allahu |
التأله |
敬神するの意。 |
イラーフ |
إله |
①【崇拝される者】の意。 ②シーバワイヒの伝える説。 ③キサーイー等の説。 |
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lāha |
لاه |
シーバワイヒの伝える異説 |
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waliha |
وَلِهَ |
思い惑うの意(クルトゥビー所載の説)。 |
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‘aliha |
أله |
安らぎを得るの意。 |
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lāha |
لاه |
隠れるの意。 |
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‘aliha |
أله |
熱望するの意。 |
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‘aliha |
أله |
恐れる(自動詞)保護を与える(他動詞)の意。 |
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[出典]イブン・カスィールの注釈書をもとに筆者作成 |
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*4 ↑ アリー・アル=キサーイー。生年:不詳。没年:ヒジュラ歴180(西暦796)。文法学者としてはクーファ学派に属する。
*5 ↑ ヤフヤー・アル=ファッラー。生年:ヒジュラ歴144(西暦761)。没年:ヒジュラ歴207(西暦822)。キサーイーに師事した。アッバース朝のカリフ・マアムーンの2人の子供を教育した。
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*8 ↑
*9 ↑
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