リバーの対象となる財物をリバー財(الأموال الربوية)と呼びます。リバー財が何であるかについては、次のハディース(預言者の言行録)が示しています。
金と金、銀と銀、小麦と小麦、大麦と大麦、ナツメヤシとナツメヤシ、塩と塩は等量どうしで、現物と現物(で取引する)。(この取引に於いて一方を)増やしたあるいは増やすことを求めた者はリバーを行ったのであり、得た者も与えた者も同様である*1。
また、別の伝承では
金と金、銀と銀、小麦と小麦、大麦と大麦、ナツメヤシとナツメヤシ、塩と塩は、等量どうしで(مثلا بمثل)、同量どうし(سواء بسواء)、現物(手中にあるもの)と現物で(يدا بيد)(取引する)。これらのものと異なるなら、現物と現物である限り好きなように売買するが良い*2。
以上の6種類がリバー財であることには学派間で異論はありません。
また、これら6種類に対するリバー(不等価交換)が禁じられた原因(العلة)として、各法学派は金・銀の2つに係る原因と、小麦、大麦、ナツメヤシ、塩の4つに係る原因とに分け、おおよそ次のように理解しました*3。
1.ハナフィー派
原因は①種類(の一致)と②(体積か重量による)計量です*4。これの意味するところは、金・銀は重量により計量されることにより、小麦、大麦、ナツメヤシ、塩は体積によって計量されることにより、種類の一致する金と金、小麦と小麦等で不等価交換することは禁じられるということです*5。従って、体積か重量によって計量されるもの全ては、リバー財と見なされます。
2.マーリキー派
金・銀と食料がリバー財と見なされます。
金・銀に関しては、それが貨幣で価値表象性(الثمنية)*6があるためにリバー財と見なされます。金・銀に対するリバー(不等価交換)が禁じられなかったとしたら、その(流通)量が減少し、人々が害を被るであろうという説明がなされます*7。
食物に関しては、後払いのリバーと上乗せのリバーとで場合分けされています。
後払いのリバーの場合には、全ての食物がリバー財と見なされます。
上乗せのリバーの場合には、基本的食料(الاقتيات)、保存性(الادخار)という条件を備えたものがリバー財と見なされます。
基本的食料とは、
①それだけを食べていても生きていけるような食料、例えば穀物、ナツメヤシ、干し葡萄、肉、乳、及びこれらから作られた物、と
②これらを整えるもの、例えば塩、油、玉葱、ニンニク、酢、香辛料等です。
保存性に関しては、特にその保存期間が決められているわけではなく、それぞれの種類毎に慣習によって判断されます*8。
3.シャーフィイー派
金・銀と食料がリバー財と見なされます。
金・銀は貨幣性、あるいは価値表象性によってリバー財と見なされます。額面は重要ではなく、地金であれ鋳造貨幣であれ重量で等価交換されます*9。
金・銀を除く重量で取引されるもの、例えば鉄、銅、鉛、綿花、亜麻、羊毛、紡績糸等はリバー財とはならず、上乗せの取引も、後払いの取引も許されます*10。
食料に関しては、シャーフィイー派は小麦、大麦、ナツメヤシ、塩に共通する原因は可食性であるとします。その根拠は「食料と食料は等量同士で(取引する)」というハディースがあることと、穀粒がリバー財であるのに対し、穀物が地面に植えられて食べられない間はリバー財とはならず収穫後にリバー財となることです*11。
4.ハンバリー派
ハンバリー派で主流の見解は、金・銀は重量により計量されること、小麦、大麦、ナツメヤシ、塩は体積によって計量されることが、これらがリバー財と見なされる原因であるというものです*12。
このリバー財の規定はイスラーム金融を理解する上で重要な要素です。特にムラーバハにおいて金・銀が取引対象となり得ないことの理由は、金・銀がリバー財であることと密接に関わっています。
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*6 ↑ 価値表象性という用語については、柳橋 博之『イスラーム財産法の成立と変容』創文社、1998年、123頁の「一般に貨幣には、価値表象物としての側面と、物としての側面がある」という記述から着想を得た。
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و أما العلة في تحريم ربا الفضل فهي أمران: الاقتيات و الادخار، أي أن يكون الطعام مقتاتاً أي أن الانسان يقتات به غالباً بحيث تقوم عليه بنيته، بمعنى أنه لو اقتصر عليه يعيش بدون شيء آخر، دون أن تفسد البنية كالحبوب كلها و التمر والزبيب و اللحوم و الألبان و ما يصنع منها. و في معنى الاقتيات: إصلاح القوت كملح و نحوه من التوابل و الخل والبصل و الثوم و الزيت.
و معنى كونه صالحاً للادخال : أنه لا يفسد بتأخيره مدة من الزمن، لا حد لها في ظاهر المذهب، و إنما بحسب الأمد المبتغى منه عادة في كل شيء بحسبه، فالمرجع فيه إلى العرف دون تحديد بمدة ستة أشهر أو سنة، كما رأى بعضهم. وهبة الزحيلي، الفقه الإسلامي و أدلته، ط3، دمشق، 1989، ج 4، ص685.
فإن كان مقتاتا غير مدخل أو مدخرا غير مقتات ففيه خلاف كالجوز واللوز واختلف أيضا في التين فإن لم يكن مقتاتا ولا مدخرا فليس بربوي كالخضر والبقول والفواكه التي لا تدخر. ابن جزي، القوانين الفقهية، على الشبكة.
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