リバー(不等価交換)が禁じられた理由(حكمة)

 リバー(不等価交換)が禁じられた理由(حكمة)は色々とありますが、一例としては以下のように説明されます。

 リバーには2種類ある。明瞭なリバーと隠れたリバーである。明瞭なリバーは甚大な害悪が存在するために禁止され、隠れたリバーは明瞭なリバーへの「抜け道」として禁止された。つまり、明瞭なリバーは目的として(それ自体が)、隠れたリバーは(目的に至る)手段として禁止されたのである。

 明瞭なリバーとは後払いのリバーであり、(イスラーム以前の)無明時代に人々がおこなっていたものである。例えば債権(の支払い期限)を遅らせると同時に債権額を増加させ、遅らせる毎に債権額を増加させるので、ついには100が100万にもなってしまう。多くの場合、無一文で切迫した人(معدم محتاج)以外はこれを行わなかった。

 債務者が、返済額を増やせば債権者が支払期限を延期して待つであろうと考えた場合には、債務者は禁固や執拗な督促から逃れるために返済額の増加を負うこととなり、次々と(このような)支払いを重ねることによって、害悪と損害が激しくなる。

 また、債務は債務者の全所有物に至るまで増加し、債務は債務者がそこから何の益を得ることもなく増大し、債権者の債権は(同信の)兄弟である債務者がそこから何の益を得ることもなく増大し、(同信の)兄弟の財物を不正に所得し、(同信の)兄弟には甚大なる害悪が生じる。

 従って、最も慈悲深い存在の慈愛と英知と被造物への恵み(إحسان)として(アッラーは)利子を禁じ、リバーを貪る者、リバー、リバー(の取引を)記録する者、リバー(の取引の)2名の証人を呪い給うた。また、リバーを辞めない者に対して、アッラーとその使徒の戦いを許可された。このような警告はリバー以外の大罪には見あたらず、従ってこれが最大の大罪の1つである(ことが知られる)*1

 以上が、日本語での利子に相当する「後払いのリバー」が禁じられた理由です。明瞭で現代に生きる我々にもわかりやすい理由かと思われます。

 他方、上乗せのリバーが禁じられた理由は以下のとおりです。

 上乗せのリバーが禁じられたのは、「抜け道」をふさぐためである(من باب سد الذرائع)。これはアブー・サイード・アル=フダリーの伝えるハディース(預言者の言行録)において預言者ムハンマドが

 銀1ディルハムを銀2ディルハムで売ってはならない。というのも、私たちはあなたたちがリマ-(を取るのではないかと)心配するからである。リマーとはリバーである。

と言われたことにより明らかである。預言者は人々が後払いのリバー(を取るのではないかと)心配したことにより、人々に上乗せのリバーを禁じた。というのも、人々が銀1ディルハムを銀2ディルハムで販売するのは、両者の間に品質や(鋳造の)金型や重量などに違いがある以外には無く、(上乗せのリバーによって生じた)先払いの利益から(それがやがては)後払いの利益へという良いわけをするのであるが、これは後払いのリバーそのものであり、このような抜け道は大変近い存在である。

 従って、かかる抜け道を封鎖し、即時払いであれ後払いであれ銀1ディルハムを銀2ディルハムで取引することを禁じたのは、法の制定者(アッラー)の英知の1つである。このような英知は理性にも一致した合理的なものであり、人々から腐敗への入り口をふさぐものである*2

 上乗せのリバーが禁じられた理由は、それが利子(後払いのリバー)に繋がりかねないから、予防的に禁止されたというものです。


*1

الربا نوعان: جَلي، و الخفي، فالجلي حُرِّم لما فيه من الضرر العظيم، و الخفي حرم لأنه ذريعة إلى الجلي فتحريم الأول قصداً، و تحريم الثاني وسيلة، فأما الجلي فربا النسيئة، وهو الذي كانوا يفعلونه في الجاهلية، مثل أن يُؤخِّر دينه و يزيده في المال، و كلما أخَّره زاد في المال، حتى تصير المئة عنده آلافاً مؤلفة؛ و في الغالب لا يفعل ذلك إلا معدمٌ محتاج؛ فإذا رأى أن المستحقَّ يُأخِّر مطالبته و يصبر عليه بزيادة يبذلها له تكلَّف بذلها ليفتدي من أسر المطالبة و الحبس، و يدافع من وقت إلى وقت، فيشتد ضرره، و تعظم مصيبته، و يعلوه الدَّيْن حتى يستغرقَ جميع مَوْجوده، فيربو المال على المحتاج من غير نفع يحصل له، و يزيد مال المرابي من غير نفع يحصل منه لإخيه، فيأكل مال أخيه بالباطل، و يحصل أخوه على غاية الضرر، فمن رحمة أرحم الراحمين و حكمته و إحسانه إلى خلقه أن حرَّم الربا، و لعن آكله و موكله و كاتبه و شاهديه، و آذن من لم يَدَعْه بحربه و حرب رسوله، و لم يجئ مثل هذا الوعيد في كبيرة غيره، و لهذا كان من أكبر الكبائر. ابن قيم الجوزية، إعلام الموقعين، الدمام، 1423هـ، ج 3، ص 397.

*2

و أما تحريم ربا الفضل فتحريمه من باب سد الذرائع، كما صَرَّح به حديث أبي سعيد (ر)، عن النبي (ص) : (( لا تبيعوا الدرهم بالدرهمين؛ فإني أخاف عليكم الرِّماء، و الرماء هو الربا))، فمنعهم من ربا الفضل لما يخافه عليهم من ربا النسيئة، و ذلك أنهم إذا باعوا درهما بدرهمين، و لا يُفعل هذا إلا للتفاوت الذي بين النوعين – إما في الجودة، و إما في السكة، و إما في الثقل و الخفة، و غير ذلك – تذَّرعوا بالربح المعجَّل فيها إلى الربح المؤخر، و هو عين ربا النسيئة، و هذه ذريعة قريبة جداً؛ فمن حكمة الشارع أن سد عليهم هذه الذريعة، و منعهم من بيع درهم بدرهمين نقداً أو نسيئة؛ فهذه حكمة معقولة مطابقة للعقول، و هي تسد عليهم باب المفسدة. إعلام الموقعين، ج3، ص 398-399.