イスラーム美術を展示する美術館


より大きな地図で 日本でイスラーム美術を展示あるいは収蔵する美術館 を表示

 イスラーム美術を見ることができる国内外の美術館の地図と一覧表を作成しました。これは、「日本で見られるイスラームの美術―美術館紹介」(桝屋友子『すぐわかるイスラームの美術』東京美術、2009年、148頁所載)の表を基に、各美術館等のウェブサイト参照、電話での照会、現地訪問などによって得られた情報を付加し、項目の若干の加除訂正*1を行い、常設展の有無によって大別したものです。海外の美術館はインターネットサイトが充実しているものを中心に選びました。
 日本の美術館におけるイスラーム美術品の蒐集・展示状況を概観すると、まず、陶器が充実していることが指摘できるかと思います。これはおそらく、日本には陶磁器の産地としての伝統があることに加え、陶磁器が茶器や花器として用いられ代表的な骨董品として親しまれてきたという文化的背景があるからでしょう。
 展示内容の特徴としては、タイル専門の「世界のタイル博物館」、服飾専門の「文化学園服飾博物館」、絨毯専門の「白鶴美術館・新館」、ペルシャ錦専門の「アジア博物館・井上靖記念館-ペルシャ錦館」などが専門に特化した展示を行っています。
 公立・私立の区分から見ると、私立美術館にかなり充実したコレクションがあり、公立の横浜ユーラシア文化館も岡山市立オリエント美術館もその核となっている部分は個人からの寄贈です。日本のイスラーム美術蒐集の立役者たちは民間の実業家、研究者、芸術家であり、国家の関与の度合いが低いことも特徴として指摘できるでしょう。
 人とのつながりでいえば、シルクロードに縁のある画家(平山郁夫)や文豪(井上靖)に因む美術館や、皇族(三笠宮殿下)の後援を得た美術館(中近東文化センター、岡山市立オリエント美術館)などイスラーム美術と現代日本との様々な関連性も見えてきます。
 また、企業の創業者や宗教教団の教祖などのコレクションに由来する美術館は、創立者の世界観、嗜好、哲学を大きく反映しています。ただ、この場合でも芸術家や専門家との連携によって蒐集された場合には、バランスのよいコレクションとなっているようです。蒐集家が実業家にしてその分野の専門家というケースも見受けられます(世界のタイル博物館の山本正之)。
 地域的にはこれら美術館は関東、甲信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州に存在し、北海道、東北、沖縄には存在しないようです。
 この地図では、イスラーム美術に関する常設展示がある美術館を青色で、イスラーム美術に関する常設展示がないか展示品点数が限られている美術館を黄色で表示してあります。

*1 野外民族博物館リトルワールド、松岡美術館、東京富士美術館、徳川美術館を追加、豊雲記念館(2011年3月閉館)、秋月郷土館(イスラーム美術の収蔵無し)を削除。