胎土の技術革新

制作地 時代 彩画/色彩
エジプトか 12世紀頃  

特徴など
11世紀までの胎土(陶器の素材)は粘土が主体であったのに対し、12世紀頃に石英を多く含むフリット胎土と呼ばれる複合胎土(人工胎土)が完成した。これにより、白くてより硬質の陶器が製作されるようになる。当時イスラーム圏では中国の磁器が珍重され、その薄さと白さを模倣するために様々な工夫がなされた。11世紀までは胎土の色を隠すために白い不透明釉をかけたり白化粧土をかけたりしていたものの磁器のような薄さは実現できなかった。12世紀以降使われた複合胎土(人工胎土)によりかなり薄くて白い陶器が作られるようになった*7

ただし、分類上はやはり陶器にとどまり、「硬く、軽く、薄くたたけばチンチンと涼やかな音のする中国の磁器」*8の特徴を兼ね備えることはなかった。なお、中国では染付に必要な酸化コバルトが不足したため、元代には「回青」と呼ばれるペルシア産のものが盛んに輸入された*9


*7 阿部克彦「陶器」『岩波イスラーム辞典』、桝屋友子「陶器」『新イスラム事典』、桝屋友子『すぐわかるイスラームの美術』東京美術、2009年、112-13頁。
*8 三杉隆敏『「元の染付」海を渡る 世界に拡がる焼物文化』農文協、2004年、130頁。
*9 三杉隆敏『「元の染付」海を渡る 世界に拡がる焼物文化』農文協、2004年、110-11頁。