文学的な美しさがある翻訳といえば、井筒俊彦訳が挙げられるでしょう。特に、下巻の後半部分の翻訳は生き生きした感じの日本語表現で、読ませる内容だと思います。
ええ呪われろ、よるとさわると他人の陰口
宝を山と貯めこんで、暇さえあれば銭勘定、
これだけあればもう不老不死と思ってか(104章1-3節)。
もう1箇所、引用します。
どんどんと戸を叩く、何事ぞ、戸を叩く。
戸を叩く音、そも何事ぞとは何で知る。(101章1-2節)。
上の引用箇所では、クルアーンの初期啓示の不思議な文体を生かそうとした井筒俊彦の苦労が偲ばれますが、「そも何事ぞとは何で知る」というのは日本語としても美しいと思います。
(K.S.)