1970年に「世界の名著」シリーズの一冊としてとして中央公論社から出版されたものが、装いを新たにして出版されたものです。
訳文が大変わかりやすいため、とりあえずクルアーン(コーラン)を手にとって見たいという場合にはお勧めだと思います。特に、最初から最後までとりあえず通読してみたい、という方は藤本等訳を選ばれてはいかがでしょうか。
天地のあいだにあるものはすべて神に属する。おまえたちより以前に啓典を授かった者にも、またおまえたちにも、われらは神を畏れかしこめとの命を下しておいた。たとえおまえたちが背信の態度をとるとしても、天地のあいだにあるものはすべて神に属する。もともと神は不足するものなきお方、讃えられるべきお方である(第4章131節)。
語られている内容は高度ですが、表現はごく平易です。ちなみに、「不足するものなき」というのはアラビア語で「ガニー」といいまして、日常的には「お金持ち、分限者」という意味で使われます。それが、専門用語としては「不足するものなき」、「自足した」、「満ち足りている」、「何も不要である」といった意味になります。このように、平易な訳ではあっても適切な術語が選ばれています。
もう一箇所引用します。
おお、信ずる者たちよ、万一、集会で、「席を広くあけよ」と言われれば、たがいにあけるがよい。そうすれば、神はおまえたちに席をおあけになる。また、もし、「たちあがれ」と言われれば、たちあがるがよい。そうすれば、神は、おまえたちのうちで信ずる者や知識を授けられたものを位階高くあげたもう。神は、おまえたちの所業によく通暁したもうお方である。(第58章11節)。
(K.S.)