8. 6章145節

【岩波版】
 宣言せよ、「わしに啓示されたもの(割注:『コーラン』)の中には、死肉、流れ出た血、豚の肉――これは全くの穢れもの――それにアッラー以外の(邪神)に捧げられた不浄物、これらを除いては何を食べても禁忌ということにはなっていない。」
【中公版】
 言ってやれ、「私に啓示されたものの中には、死骸、流された血、あるいは豚肉、これは穢れであるが、あるいは神以外の名で屠られたけがらわしいもの、これらを除いては食べても禁制となるものはなにもない」。
【ムスリム協会版】
 言ってやるがいい。「わたしに啓示されたものには、食べ度いのに食べることを禁じられたものはない。只死肉、流れ出る血、豚肉――それは不浄である――とアッラー以外の名が唱えられたものは除かれる。」
【黎明版】
 言え、「私は、私に啓示されたものの中に、食べる者に食べることが禁じられたものを見出さない。ただし、死肉、流れる血、豚肉 ―まことにそれは不浄である― であれば別である。あるいは、アッラー以外のものの名を唱えられ(屠殺され)た邪なものだけである。

【比較】
(1)【ムスリム協会版】では、単に「アッラー以外の名が唱えられたもの」と訳されているが、【岩波版】では「アッラー以外の(邪神)に捧げられた不浄物」、【中公版】では「神以外の名で屠られたけがらわしいもの」、【黎明版】では「アッラー以外のものの名を唱えられ(屠殺され)た邪なもの」とある。この違いは、【ムスリム協会版】が原文にある「fisqan」を見落としたことによるか、あるいは2章173節、5章3節、16章115節に現れる類似表現に引きずられたものと思われる。
(2)【岩波版】と【中公版】は日本語らしい語順であり、【ムスリム協会版】と【黎明版】はどちらかというと原文の語順に近い訳文となっている。